物理学科セミナーを開催しました。

2022年度から物理学科ではセミナーを開催しています。このセミナーは、大学院生の方はもちろん、学部生も自由に参加していただくことができます。

今回は物理学科助教、佐々木海渡先生に「水に見られるガラス状態の多形とガラス転移」というタイトルで最新の研究結果について講演していただきました。

[講演概要]
水は身近に存在する物質である一方、4℃での密度極大や過冷却領域での比熱の発散傾向など、様々な異常性を持つ。近年、過冷却領域での水の研究が進み、水には低温で2つのガラス状態(低密度水と高密度水)が存在することが分かってきた。これはガラス状態の多形と呼ばれ、水の異常性と関係している可能性が指摘されている。セミナーではまず水のガラス状態の多形について概観した後、最近得られた高密度水のガラス転移についての実験結果を紹介する。
[関連リンク]
佐々木先生の個人HP
東海大学 分子複雑系研究グループ(RGMS)HP

大学院生がアメリカ、アルゴンヌ国立研究所とJefferson Lab で海外研究活動を行いました 。

 博士課程2年生の野呂凱人さん(北林研究室)が5月末から1ヶ月、アメリカ、アルゴンヌ国立研究所とJefferson Lab に研究留学をされました。野呂さんは本学理学部物理学科を卒業され、現在は本学大学院、総合理工学研究科に在籍しています。昨年度末までは主にベンツ研究室で、現在は北林研究室で研究をされています。(※ベンツ先生は昨年度末に退職されました。)今回の留学について、野呂さんからお話を伺いました。 

私はアメリカのシカゴ近郊のアルゴンヌ国立研究所にて共同研究者であるIan C. Cloet教授の研究室に3日間、また1986年から毎年開催されている「Hampton University Graduate Studies Program 2022 (HUGS2022)」に参加するためにノーフォーク近郊のJefferson Lab にて3週間滞在しました。普段はアインシュタインの一般相対性理論と、素粒子レベルで原子核を扱う有効理論の1つのNambu-Jona-Lasinio Model を用いて、ブラックホールに次ぐ強重力天体である中性子星の内部を調査しています。研究室滞在中には自分が作成した数値計算のプログラムの内容についての議論をしました。Jefferson Lab 滞在中は、原子核分野の理論から実験まで広い範囲の最先端の研究講演を聞くことができました自分の口頭発表もあり、質疑や議論によって今後の研究に繋がる良いヒントをもらえました。色々な研究について知る良い機会であったと同時に参加者の研究に対する熱意を凄く感じ、良い刺激となりました。

野呂さんの今後のご活躍、期待しています。

OG講話&学科セミナーを開催しました。

 本学OGである江口菜穂先生(九州大学応用力学研究所大気海洋環境研究センター・准教授)にお越しいただき、1年生向けのOG講話では「キャリアパス ある大気学者の場合」、学科セミナーでは「地球大気科学の基礎」というタイトルでご講演をいただきました。江口先生は、本学在学中には雪氷が気候に与える影響について研究され、現在は九州大学応用力学研究所大気海洋環境研究センターで成層圏―対流圏間の力学的相互作用について研究をされています。

OG講話ではご自身のキャリアパスについて、ざっくばらんにお話しいただきました。受講した学生から、

「江口先生の話からは夢中になれることを探し、それを突き詰めるということを学びました。これといった夢中になれるものが自分にはまだないので、大学生活中に見つけたいです。」
「ご自身の研究の原点を忘れないように、辛いときには励みにしながら研究を行っているとのことで、自分も最初に物理に対して抱いた興味、感動を忘れないように勉強、ゆくゆくは研究をしていけるよう頑張っていきたい。」

と感想をいただきました。みなさん良い刺激を受けたようです。

学科セミナーでは地球システム系で重要な役割を果たす地球大気の概要から、気象現象および地球規模の環境問題についてお話しいただきました。

江口先生、ご講演いただきありがとうございました。

大学院生が筆頭著者の論文が掲載されました。

物理学科出身で現在は理学研究科の修士課程に在学している塚原さんと小田切さん(新屋敷研究室)が筆頭著者の論文が学術雑誌に掲載されました。

塚原さんが筆頭著者の論文”Dielectric relaxations of ice and uncrystallized water in partially crystallized bovine serum albumin-water mixtures”はRoyal Society of Chemistryが発行する学術雑誌”Physical Chemistry Chemical Physics”に掲載されました。この論文では広帯域誘電分光法を用い、低温下で凍結するタンパク質水溶液中の氷や不凍水の誘電緩和を観測し、その関係や特徴を明らかにしました。塚原さんから「コロナ禍により不便も色々とありましたが、大学院での研究活動の集大成として学術論文を掲載することが出来ました。新屋敷先生にはもちろんのこと、ご指導ご鞭撻を頂いたResearch Group of Molecular complex System(RGMS)の先生方や学生の皆様にも心から感謝しています。」とコメントを頂きました。

Tatsuya Tsukahara, Kaito Sasaki, Rio Kita, and Naoki Shinyashiki
"Dielectric relaxations of ice and uncrystallized water in partially crystallized bovine serum albumin–water mixtures"
Physical Chemistry Chemical Physics, in press
DOI: 10.1039/D1CP05679D

小田切さんが筆頭著者の論文”Interfacial polarization of in vivo rat sciatic nerve with crush injury studied via broadband dielectric spectroscopy”はPLOSが発行する学術雑誌”PLOS ONE”に掲載されました。損傷した神経の再生候補である電気刺激の適切な条件を見つけるために、広帯域誘電分光法を用いた神経インピーダンスの研究が、新屋敷教授の研究室と京都大学の共同で行われ、損傷の有無による界面分極に起因する誘電緩和強度の違いを明らかにしました。その成果をまとめたのが上記の論文です。小田切さんから「他大学の他分野の方々と研究をできたことは、自分の知識や経験を広げる貴重な機会となりました。また、論文が出版できたのは、新屋敷先生、京都大学の先生方や学生、研究室の先輩方のお陰です。感謝しています。」とコメントを頂きました。

Risa Otagiri, Hideki Kawai, Masanobu Takatsuka, Naoki Shinyashiki, Akira Ito, Ryosuke Ikeguchi, Tomoki Aoyama
"Interfacial polarization of in vivo rat sciatic nerve with crush injury studied via broadband dielectric spectroscopy" 
PLOS ONE 2021;16(6): e0252589.
DOI: 10.1371/journal.pone.0252589

学生による研究紹介 宇宙線反粒子探索計画GAPSの開発

宇宙線反粒子探索計画GAPSの開発を行っている、物理学科4年生河内研究室の大山千晶さんによる研究紹介です。
宇宙線反粒子探索計画(GAPS)は日米伊を中心に約60名が参加する南極周回長時間気球実験です。宇宙線中に微量に含まれている反粒子(とりわけ未発見の反重陽子)の高感度探索を通じてダークマター等の初期宇宙物理の課題に迫ることを主目的としています。
私はJAXAに赴き、気球フライトに耐えうる冷却システムの開発を主に行いました。実験結果が明らかにおかしい時、原因解明の為に実験装置のパーツや使用した液体の温度、温度センサー等を一から確認しなければならなかったことは大変でしたがやりがいがありました。
基本的な作業(実験装置準備から結果を出すまで)のほとんどを自分に任せてもらえましたが、ミスが入ってしまうこともありました。しかし、ミスをしたとしてもちゃんとこういう理由があるから注意が必要なんだよ、と学生目線で一緒に考えていただいたことや、目立たない部品の実験でも試験機を動かすためには必要不可欠なものであり、国際的なプロジェクトの一員として名前が載るんだよと言われたことが印象に残っています。
このように、東海大学ではJAXAと共同で研究を行うことが出来ます。大学には無い研究施設や研究員の方と実際に関わる経験はとても貴重であり、実験以外にも目的に対する考え方やデータのまとめ方を自分なりに見つけ学ぶことが出来ると思います。