大学院理学研究科の金子さんと神永さんが「第38回プラズマ・核融合学会」で若手学会発表賞を受賞しました

物理学科、利根川先生の研究室に所属している大学院理学研究科の金子さんと神永さんが「第38回プラズマ・核融合学会」で若手学会発表賞を受賞しました。おめでとうございます!

大学院理学研究科の金子さんと神永さんが「第38回プラズマ・核融合学会」で若手学会発表賞を受賞しました

卒業研究発表会を行いました。

2022年1月末に,テレビ会議システム、Zoomを使った遠隔形式での卒業研究発表が行なわれました。皆さん素晴らしいご発表でした。卒業生が行なった発表のタイトルを一部掲載します。

  • 離散フーリエ変換による協和音・不協和音の解析
  • 矮小楕円銀河からの GeV ガンマ線観測によるダークマターの質量と衝突断面積 に対する制限
  • 宇宙線反粒子探索計画 GAPS 用冷却システムの開発 ―接触熱伝達の改善に向け たフィラーの評価―
  • Fermi 衛星による活動銀河核の観測
  • 先進ダイバータを模擬した湾曲発散磁場における非接触プラズマの挙動
  • 非線形光学結晶による第 2 高調波発生において波長変換効率と出力の向上に関 する研究
  • 光学計測による音響波検知の基礎的研究
  • 高分子水溶液の粘性挙動に及ぼす尿素添加と温度変化の影響
  • 示差走査熱量測定によるマンニトール/ソルビトール混合物のポリアモルフィ ック転移に関する研究
  • 中学校理科物理分野のデジタル教材の開発
  • TensorFlow を用いた波動関数の計算
  • Massless Spin1 粒子と Ward 恒等式
  • 固体色素増感太陽光励起ファイバーレーザー
  • 場の量子論による電子の異常磁気モーメントの導出
  • マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたスリザーリンクの数値解法
  • バリオン数の保存について

遠藤教授が携わった論文が学術雑誌Advanced Optics Materialの表紙を飾りました。

物理学科の遠藤教授は長年、太陽光励起レーザーの研究に取り組まれてきました。この度、シミュレーションの結果をもとに、太陽光励起レーザーの設計を見直すことで出力の大幅な向上が可能であることを示し、その成果が学術雑誌Advanced Optics Materialに掲載されました。さらに、その成果を表した絵が掲載号の表紙を飾りました。

以下のリンクから原著を閲覧できます。(オープンアクセス)

Stephan Dottermusch, Taizo Masuda, Masamori Endo, Bryce S. Richards, Ian A. Howard, “Solar Pumping of Fiber Lasers with Solid-State Luminescent Concentrators: Design Optimization by Ray Tracing”, Advanced Optics Material 9, 2100479 (2021)

https://doi.org/10.1002/adom.202100479

研究紹介 佐々木海渡研究室

高圧力下物性計測システムの写真。左から10トン油圧プレス機、油圧ポンプ、物性計測システム。圧力範囲は1気圧から4万気圧、温度範囲は-196℃から室温における物質の電気的、光学的、熱的性質を調べることができる。

同じ組成の物質でも性質の異なる結晶形が複数存在することがあります。これを結晶多形と呼びます。例えば黒鉛とダイヤモンドは炭素単体で構成されていますが、その結晶構造(粒子の配列)が異なるため、物性も大きく異なります。もう一つ具体例を示しましょう。我々の身の回りに広く存在している水も実は結晶多形を示します。水分子は酸素原子1つ、水素原子2つからできており、その構造はとても単純です。ですが、驚くべきことに水の結晶系は少なくとも19種類も見つかっています。これは水素結合と呼ばれる異方的な相互作用により、水分子達が互いに影響を及ぼし合っていることが原因の一つと言えます。

実験風景。佐々木先生と博士課程の高塚さん。

結晶に多形が存在することは、黒鉛とダイヤモンドの例のように、広く知られています。では、液体状態には多形が存在するのでしょうか?素朴に考えれば、ランダムな粒子配置を特徴とする液体では、その構造の特徴は一つに決定されるような気がします。ですが、実はリンやケイ素、シリカガラス、水などでは液体状態が複数存在することがわかってきています。現在の所、注目する液体の構成粒子が(a)ネットワーク性の相互作用を持つ場合か、(b)異方的な相互作用を持つ場合、もしくは、(c)複数の谷があるポテンシャルを持つ場合にその液体が液体状態の多形を示すと言われています。(図を参照)

私の最近の研究の目的は、特に水について、複数存在すると考えられる液体状態の動力学的な側面を明らかにすることです。水は身近に存在する液体であり、我々の生活どころか生命活動になくてはならない物質の一つです。一方で、科学的な立場からは水は異常な液体であると認識されています。近年、水の異常な性質は液体状態の多形で説明可能であることが提案されており、水の不思議に迫るために日々研究に取り組んでいます。

図 複数の液体状態をもつことの原因であるとされる考え方。三島、Netsu Sokutei 31(1)23-28を参考にしています。

2020年度卒業研究のタイトル

2021年2月に,Teamsを使った遠隔形式での卒業研究発表が行なわれました。卒業生が行なった発表のタイトルを一部掲載します。

音響解析で調べる古代アンデスの遺産(楽器土器)
古代アンデス楽器土器の音響シミュレーション
水素結合に着目した高分子溶液のレオロジー特性
廃棄昆布をエネルギーに-海藻由来のバイオエタノール生産-
海の恵みの新活用法-わかめに含まれるセルロースの低分子化-
腱分泌組織テンドンゲルの医療応用に向けたコラーゲンの誘電測定
塩基性多糖キトサンの熱拡散現象
グアニン-シトシン含量を制御したDNAの熱泳動現象
温度勾配下のメダカ卵観察による発生過程の解析
トリチウム水処理に向けた流体デバイスの開発と機能評価
氷結したPoly(vinyl pyrrolidone)水溶液中のX線回折法による氷の結晶構造
Poly(vinyl pyrrolidone)-propylene glycol溶液の誘電緩和の多様性
氷結した球状タンパク質水溶液の氷の誘電緩和とX線回析法による結晶構造の研究
純氷の誘電緩和の冷却速度依存性
Geant4を用いた電子飛跡検出型コンプトンカメラのエネルギー分解能別性能評価
Geant4を用いたシミュレーションによる電子飛跡検出型コンプトンカメラの位置分解能の評価
電子飛跡検出型コンプトンカメラのデータ収集システム改善
電子飛跡検出型コンプトンカメラ (ETCC)を用いた多方向撮像の考察
Raspberry Piでのカメラからの画像認識と機械学習
畳み込みニューラルネットワークを用いた銀河の判別
BL Lac天体の可視光望遠鏡による光度変化観測
多地点流星電波観測によるおひつじ座昼間流星群の5年間の活動の解析
流星電波観測に含まれる飛行機エコーの多地点解析
宇宙線反粒子探索計画GAPS用ヒートパイプの開発─実規模を用いたヒートパイプ内「ピン」の有効性の検証─
Fermiガンマ線宇宙望遠鏡による電波銀河M87の観測
超新星残骸の進化とガンマ線の起源
マグネターの進化:異常X線パルサーから軟ガンマ線リピーターへ
機械学習を用いた波動関数の求め方について
Excelを用いた簡易的な物理を理解する教材の作成
VR技術による物理実験室の開発
原子核の質量公式について
NO2のレーザー検出に関する基礎研究
青色半導体レーザーの外部光共振器に関する研究
光ファイバーにおける誘導ブリルアン散乱閾値のパルス幅依存性に関する研究
ファイバーレーザーにおける発振線幅と第2高調波発生効率への影響に関する研究
940nm帯半導体光増幅器のパルス増幅特性に関する研究
蛍光型太陽光集光器(LSC)の最適化問題
直線型ダイバータ模擬装置での湾曲発散磁場を用いた熱負荷低減の基礎研究
重水素非接触プラズマ暴露によるダイバータ材料の表面改質
電子フェンスを用いた非セシウム型負イオン源の引き出し電極への熱負荷低減
2準位原子-共振器結合系における真空Rabi振動とPurcell効果
グローバーのアルゴリズムにおけるデコヒーレンスの効果
摂動が存在するときのトーリックコードの数値計算
Harrow-Hassidim-Lloyd(HHL)アルゴリズムのデモンストレーション
マルコフ連鎖モンテカルロ法の連立方程式・数独への応用
イジング模型の相転移点の数値計算:1次元と2次元の間の転移点の変化
フォルトマント消去と周波数スケール変換によるボイスチェンジ
合成信号の実フーリエ級数展開
離散フーリエ変換に基づく簡易型シンセサイザーの作成
音の周波数特性を用いた自動採譜プログラムの作成
子音と母音のフーリエ解析と日本語音声の再構成
離散フーリエ変換を用いた和音解析
場の量子論における発散の正則化と繰り込み
量子電磁気学とCPT変換
強化学習の基礎と物理学への応用の可能性
CP対称性の破れと時間の矢
オッカムの剃刀によるニュートリノ混合
ダークマターと古生物の大量絶滅
ヒッグス類似粒子からの重力波
DCGANによる銀河の画像生成
Higgs粒子と次世代加速器ILC
ビッグバン元素合成による重水素の生成
観測ノイズによる人工知能の混乱
魔方陣とニュートリノ質量行列
ダークエネルギーと宇宙の未来

研究紹介 伊與田研究室

昔々、太陽が地球のまわりをまわるという天動説が信じられていました。今では、地動説の方がより自然なものとして受け入れられています。また、遠くの人に連絡を取るには手紙で届ける必要がありました。しかし、今では電磁波を用いて簡単に通信をすることができます。このように世界観や技術は昔と今とで大きく変わっていますが、その背景には力学や電磁気学といった物理の分野があります。これらの分野は高校物理で学びますが、その基礎は19世紀までに出来上がっていました。

20世紀以降、統計力学・量子力学・相対性理論などの様々な現代物理学の基礎をなす分野が作られて発展してきました。その応用は私たちの日常生活で数多く活かされており、コンピュータやスマートフォンに使われる半導体やGPSなどもその例です。上記の分野は、現代物理学やそれに伴う世界観を理解する上でとても重要な科目として物理学科で学ぶことになります。私の研究の紹介をする上で量子力学と統計力学を避けては通れないので、ここでは、まず量子力学と統計力学のとても簡単な説明をしましょう。

量子力学は、原子や電子などのミクロな粒子のための力学です。マクロな物体、たとえば野球のボールはニュートン力学における運動方程式に従って運動しますが、ミクロな粒子は量子力学におけるシュレーディンガー方程式に従って運動します。量子力学の応用は多岐にわたり、たとえば半導体・LEDなどのデバイスがよく知られていますし、キログラム原器が廃止された2019年の国際単位系の再定義を支えていたのも量子技術です。最近では、量子暗号や量子コンピュータへの応用も期待されています。

統計力学は、多数の粒子のマクロな性質をミクロな観点から調べるための学問です。私たちの身の回りにある物質は原子や電子などのミクロな粒子を無数に多く含んでいます。この物質のマクロな物理量、たとえば、熱力学においてエネルギーと同様に重要な量であるエントロピーを計算するために統計力学が使われます。この計算を行うための基本的な概念として、粒子の集団を表すためのアンサンブルと呼ばれる確率的な状態があります。アンサンブルを用いた計算結果は実験をとてもよく説明するため、アンサンブルは統計力学の基礎的な概念として用いられています。

伊與田研究室では、統計力学の基礎を量子力学を用いて理論的に研究しています。最近の研究で、多数の粒子の量子力学的性質自体に熱力学的な性質が含まれることが分かってきたため、アンサンブルを用いない統計力学が研究されるようになりました。私の研究室では、理論的な計算やコンピューターによる数値計算を用いて、「アンサンブルを用いずに量子力学だけを用いて、ミクロな世界とマクロな世界がどのように繋がるか?」などの問いに取り組んでいます。また、学生の卒業研究では、量子コンピュータや相転移に関する数値計算などもしています。